悩める宿屋のブログ

宿屋の3代目です。40代前半2児の父。家族経営の宿で世代交代を視野に入れて奮闘中。

憂うべき読書量

最近、社会人の読書量が少なすぎる、

それどころか、

大学生の読書量が圧倒的に少ないのだそうだと、

ネットで囁かれているので気になって調べてみた。


ある資料によると、社会人の1ヶ月の読書量が

平均で2.58冊という結果。


その中でも、0冊が36.1%!

実に3分の1以上が全く読まないというのである。


年間で調べると、平均12~13冊。


大学生に至っては、年間の読書量が平均で2.5冊。

0冊は31.2%!やはり約3分の1が全く読まないのだ。


出版業界が危ういのもうなずける結果である。


「若者の活字離れ」と騒がれてはいるが、

まさかここまでとは。


暇さえあれば地元の図書館に頻繁に出入りし、

「うーん、これは読んだんだよな〜なんか気の利いた本無いのかな〜」

などとブツブツ言いながら30分ほどウロウロして毎回3~4冊小説を

借りていく私に友人が少ないのも全く不思議ではない。


以前飲み会で好きな女子のタイプを聞かれ、

「電車の片隅で、バッグからそっと文庫本を取り出して読みそうな人」

と臆面もなく答えてドン引きされたのも、

今となっては全く不思議ではない。



中毒とは言っても、

カフェイン中毒、ネット中毒、ゲーム中毒など

様々だが、私は活字中毒だと自負している。

活字を目で追っていないとそわそわしてくるのだ。


少なく見積もっても週に1冊として、

年間52冊は読んでいることなる。


今でこそ、こうして宿屋を切り盛りしているが、

何を隠そう大学生の頃は文学部に在籍し、

英文学を専攻していた。

進路を選択するにあたって、文学に触れること、

少なくとも当時から活字に対してアレルギーはなかった

と言えるかもしれない。だが、胸を張ってこれを読み込んだ

と言えるものもないのは確かだ。


統計も示す通り、大学生の読書量が少ないのは

よく分かる。やることが多いのだ。仲間と騒いだり、

デートしたり、サークル活動やバイトに明け暮れたり。

ただその中でも、本の貸し借りをする友人はいた。

酒を飲み、物語について語る。かけがえのない時間だった。


卒業して10数年経つが、今でも驚くべきことに

本の貸し借りがあり、この本面白いよ、といった

情報交換がある。

その情報は読書量の蓄積がある分、

計り知れない価値がある。

そうした友人を得ることができただけでも、

大学へ進学した価値があると思っている。


学生時代より現在の方が読書量は多いかもしれない。


ただ、今になって当時文学部で良かったと思えるのは、

「読書をする」という習慣を身に付けることができたことだ。

その習慣は間違いなく私の人生を豊かにしてくれた。

現在の判断基準が、いつか読んだ本に基づいて

出来上がっていると感じることはよくある。


「宝島の海賊たちが盗んだ財宝よりも、

本には多くの宝が眠っている。

そして、何よりも、宝を毎日味わうことができるのだ」

ウォルト・ディズニーは言う。


読書の習慣は、

他人の気持ちを推し量る手助けにもなっているし、

ある情報に接した時に、断面積が多くもなる。


宿屋といったある意味文学とは全くかけ離れた

ように見える職業だが、実は「人の心を扱う」という

点において、共通する部分がある。

文学は行間を読むことによって理解を深めるが、

宿屋というサービス業でもお客さんの

隠れたニーズを発見することが重要なのだ。


そうした点で、文学を勉強していたことは、

何となく現在につながっていたのかもしれない。


点と点はつながる。ただ、あらかじめつなげることは

できない。後になって振り返って初めて、つながっていた

ことに気付くのだ。